賃金就業規則コンサルタント、社労士(社会保険労務士)のスペシャリストANGELO

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相談事例
賃金

過誤払い銀行振込遅刻早退のカット初任給
残業手当通勤手当家族手当非常時払い
給与体系直接払い産前産後休暇と賃金賃金の男女間格差
各種手当について能力給制度

【過誤払い】
Q 前の月の欠勤を、事情があって欠勤しなかったことにして給与を支払った。その代わりに今月1日欠勤したことにして給与をカットしたいのだが。
A 原則としてそれは出来ない。民事的にはそれで相殺されることになるが、労働法の建前からすれば、前の月の欠勤分を支払うのはかまわないとしても、今月は欠勤していないのにカットすることは出来ない。ただし、前の月にカットすべきだったのをし忘れたので、(今月分ではなく)前の月の分を遅れてカットするというのなら、本人の了解を得て行って問題はない。(過誤払い扱い)

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【銀行振込】
Q うちでは給料は全員銀行振り込みとしているのだが、新しく採用した者から現金でほしいと言ってきたので、断わったところ大変不満らしい態度である。どうしたらよいだろう。
A 給与は現金(通貨)支払いが原則であり、銀行振り込みはむしろ例外的扱い。したがってそうするには個々人の同意が必要になってくる。労使協定等によって銀行振り込みとする旨の定めがあればよいとする学説もあるが、原則は個人の同意を要件としているので、当人が拒否する場合には強制は出来ないと解釈すべきであろう。

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【遅刻早退のカット】
Q 当社は遅刻や早退については30分単位と決め、30分までは30分、31分~60分までは60分の遅刻早退として給与カットをしている。問題はないか。
A 大いに問題である。、
 これは例えば10分の遅刻は30分の遅刻とされることになり、20分間の労働の対価が支払われないわけで、労働法に違反した処理と云わざるを得ない。計算の都合上、許容範囲というものがあるとしてもこれではいささか幅がありすぎる。。
 どうしてもそうしたいというなら労基法91条の減給制裁として処理する方法があるが、それには就業規則への明示が必要であり、1回の額が平均賃金の半日分以内、月間の総額で10分の1以内という定めに従う義務がある。本人にも制裁である旨の通知が必要になろう。
 相談のケースはそこまでの意図はなく、単に遅刻早退分は支払わないというだけの事であったので改めることとしたそうである。
 なお、皆勤手当や精勤手当の制度を設け、支払い基準に従ってその手当をカットしたり減額したりすることならまず問題はなかろう。

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【初任給】
Q 新卒者を何人か採用したのだが、その中に事情により年齢が少し上の者がいる。給与はどうしたらよいだろう。
A 法律上の問題ではないので会社の方針に沿ってよいのだが、よほどに離れた年齢でなければ他の者と同一でよいのではないだろうか。 
 既に卒業した者で社会経験のある者、つまり中途採用者ならその経歴に応じた配慮が必要ではあるが、同じ新卒ならわずかの年令差は考慮の対象にはしなくてもよいと思われる。
Q 初任給決定ではいつも悩んでいる。だいたいは当人の前職での賃金を参考にしてはいるのだが。
A それは賃金に不公平を生む元凶といってもよい方法で、直ぐにでも廃止することである。このようなやり方をしている会社は結構多いのだが、きちんとした我が社独自の規定を作り、前職は前職、当社は当社、当社に採用を希望するなら当社規定の金額である、と、毅然とすることだ。
 良い人材なので採用したいと思うと、ついつい相手の希望を聞いて合わせようとするものだが、それは組織全体のやる気を自ら崩すようなもの。人は他社の賃金よりも自社仲間の賃金により強い関心を持つ、とは、組織心理の常識である。
 もしどうしても優遇したいのであれば、例えば特別な技術資格を有しているなど、皆が納得できる根拠を示し、かつ、しかるべきポジションを与えて行うことだ。
Q 私の会社は初任給が18万円です。同業他社に比べすごく安いような気がするのですが、いかがでしょう?
A なるほど。確かに同業他社に比べれば安いのかもしれませんね。では、何故あなたはその同業他社に就職しなかったのですか? 面接を受けたが採用されなかったのですか? それとも面接すら受けなかったのですか? どちらにしろ、不平不満を抱く前にまずはあなた自身を見つめなおすべきです。あなたには月18万円を自分ひとりで稼ぎ出せる何か資格のような物はあるのですか? 月18万円を自分ひとりで稼ごうと思ったら相当の努力が必要なはずです。その点あなたは今の会社に採用してもらえてすごくありがたい身分なはずではないのですか? 採用してもらえた会社に感謝すべきではないのでしょうか? 何か道徳的な話になってしまいましたが、一番大切なことをあなたは何か忘れてしまっているような気がします。
 もう一度自分を見つめなおしてみてください。

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【残業手当】
Q うちはパートの人達には世間相場よりもかなり高い賃金を支払い、そのかわり少しくらいの残業をしても特に残業手当は支払っていない。これはまずいのだろうか。
A それはいけない。原則として8時間を超えたなら時間外手当が必要であって、あらかじめ高い給与にしてあるからといって免除されるものではない。このようなケースは、むしろ家族的雰囲気を好む恩情的な経営者の会社に多いようで、気持ちは分からないでもないが、先ずは法の遵守が先であろう。ピシッとするところはピシッとした上で、恩情をかけるならかける、という姿勢が大切ということである。
Q 時間外手当の計算には、どんな賃金を基に計算したらよいのだろう。
入社6カ月未満でまだ有給休暇の付かない者にも休みを与えたのだが、6カ月経って有給休暇が付くようになってからその分を差し引いてもよいか。
A 原則として、名称の如何を問わずほとんどの賃金が計算対象となるが、対象外としてよい賃金には以下のものがある。
イ、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
ロ、賞与など臨時に支払われるもの
ハ、家族手当
ニ、通勤手当
ホ、子女教育手当
へ、別居手当
ト、住宅手当
 この中で、住宅手当は数年前、対象外としてもよくなったものであるが、実態として住宅扶助としての性格を有するものであることが必要なので注意されたい。もしも家賃とか住宅ローンの返済額などに無関係に、一律で支給する制度になっていたりすると、真の住宅扶助ではないとされて、計算対象外としては認められなくなる。
Q 正式な部長ではないのですが、当社の昔からの習慣でそう呼んでいる人がいます。この人は完全固定給で欠勤のペナルティーはありません。当人を残業手当などの支給対象から外してもよいでしょうか?
A よく聞いてみると、労働法で言うところの管理監督職としての権限や義務(経営者と一体の立場の者という意味。
 具体的には人事権とか懲罰権とか経営責任とか出勤管理とかを総合的に判断します。)は明らかに無いことが分かったので、除外対象者にはならないことを説明しました。
 経営者としては少しでも経費を節約したいという気持ちからの相談であったようですが、この会社では、質問の対象となった以外の正社員全員を完全固定給として、これらの者は何日欠勤しても給与カットをしていないということでした。
 就業規則や雇用契約でそう定めてあるならともかく、そうでなければノーワークノーペイの原則からして通常の欠勤は給与カットが出来ます。実態をよく調べて適法なアドバイスをしましたが、相談の問題よりよほど大きな経費削減につながりました。

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【通勤手当】
Q 通勤交通費を電車バスなどを使って通勤したものとしてその金額を支払っているが、実際にはマイカー通勤が多く、従業員の間に不満があるようだ。どうしたものだろう。
A 通勤交通費の算定には法律上の規制があるわけではないから自由であるが、そのために各社まちまちで混乱をきたしているのも事実のようだ。
 一般には質問の会社のように全て電車バスで通勤したと見なす場合、マイカーには距離に応じて一定の額を乗ずる場合、通勤方法にかかわらず何キロまではいくらと一律に決めてしまう場合、通勤方法や距離にかかわらず全員定額とする場合などが多い。
こうでなければならないとか、これが最良だといった方法はないから、会社の実情に合わせて決めればよいのであるが、私は実際の通勤方法に応じて計算式を決め、支給するやり方を指導させていただいている。
 注意すべきは質問の会社のようなやり方だと、通勤災害が起きて労災申請の際に、会社が予定し認識している通常の通勤方法か否かという点に問題が生じる恐れあり、ということである。
Q 今度遠方に引っ越した従業員から、通勤手当に制限を設けるのは間違っていると言ってきた。どうしたものだろう。
A その人が自分の思想として間違っていると考えるのは自由だが、自分の思想イコール社会通念と信じて不平を言うことは、それこそ間違っていると言い返してやってよい。
 このような一方的権利意識でものを言う若者が増えている。社会の甘やかし現象、労働法の労働者甘やかし現象からの弊害の。これは一つの典型例だろう。
 労働法でも通勤手当の規定については会社の意思で決めてよいことになっているが、その労働法が改正されるたびに、労働者を弱者とする古い既成概念からの甘やかし法が幅を利かせるから、次第に権利意識ばかり膨らむ片寄った人間を増やすことになっているようだ。
 ここらで何とか歯止めをかけないと、義務や責任といった社会人としての尊厳に関わる言葉すら、死滅してしまいそうである。
Q 先日、電車通勤している社員から、自宅の最寄り駅まで自転車で通勤しているので、そこで利用している自転車駐輪場の利用料も通勤手当として支払ってくれと言われました。支払うべきものなのでしょうか?
A 法の問題ではありませんので会社の規定次第といえます。会社の就業規則や給与規定において、自転車駐輪場の利用料も支払うと規定しているのであれば、支払うべきですし、逆に支払いを規定していない場合や規定自体が存在しない場合には、支払う必要はありません。

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【家族手当】
Q 男女共働きと言っても、生計の主たる維持者は男性である場合がほとんどなのだから、家族手当は男性社員のみに支給しています。女性社員でどうしても家族手当が必要ならば、夫の給与明細を提出させています。問題ありますか?
A 2つの点で問題があります。まず、女性である事を理由に賃金に差をつけている点が問題です。そして、女性だけに配偶者の給与明細を提出させている点も同様です。
 家族手当は「本人が世帯主であること」及び「妻(夫)が健康保険の扶養に入っていること」等を条件として、“主に本人の収入をもって家族を養っている”という事実に対して支給することが妥当でしょう。

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【非常時払い】
Q 従業員の奥さんが出産するにあたり、諸々かかる費用に充てるため、給与の前払いを求めてきたので、それは慣習によりできないと断ったところ、ではこれまでに働いた分だけでもと言う。どう判断したらよいだろう。
A これまで働いた分だけは支払ってあげる必要がある。
 これは「非常時払い」といって、給与後払いの原則の例外として定められていることで、本人や家族の出産や疾病、災害その他、非常時に充てるに必要なため、既往の労働に対する賃金を請求された場合は支払わなければならないことになっている。
 感覚的には給料の前払いに似ているが、既往の労働に対する金額に限定されるところが異なる。もしそれ以上に支払ってあげる場合は、既往の部分を超えた金額は前払いとなる。

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【給与体系】
Q うちもそろそろ能力に応じた給与体系を考えてゆきたいのだが。
A いわゆる職能給制度というものがある。
 昔はそのものずばりの能力給制度がアメリカあたりから入ってきて、一時大いに流行ったが、どうも日本の風土には合わないということで次第にすたれていった。
 ここ数年、それが形を変えて復活してきたのが職能給制度である。
 職能給制度とは能力給部分と年功序列給部分を組み合わせたものであり、依頼があれば当事務所でもお手伝いをしているのであるが、組み合わせ方が問題で上手にやらないと弊害が生ずる。
 一般には能力給の方ばかりを重視したがる傾向があるが、昔の二の舞いにならないよう気をつけなければならない。
「進歩的」を気取るコンサルタントは年功序列制をやたら叩きたがるが、叩かれても叩かれても生き残っているのはそれなりの意味があるからであろう。その最たるものはやはり日本の風土と国民性ではなかろうか。
 そういう日本の土壌を忘れて流行を追うばかりでは、手痛いしっぺ返しが待っていよう。
ちなみに、多額の費用をかけてコンサルタント会社に依頼して構築した、能力給中心の職能給制度を何例も見てきているが、少なくも小規模企業の場合は、弊害が出てきたり煩わしくなったりで失敗しているケースの方が、成功しているケースよりもはるかに多いことを報告しておく。
Q 良い人材を集めたいという会社の方針によって本年は初任給を大幅にアップした。不景気の背景もあって応募者は急増し、良い人材も集まった。だがそのほとんどが採用を辞退。いま頭を抱えている。
A このような相談の結論はおおよそ察しがつく。
 給与体系を見せてもらうとやはり想像どおり。確かにアップはしているのだが、基本給はそのままとし、手当の種類をいくつか増やして全体でアップさせている。
 そのため、いろんな手当がたくさんある変な会社という印象となり、不信感を抱かれて逆効果となったようだ。特に調整手当という、最も意味不明な手当が問題である。優秀な人材ほどこういう会社は敬遠する。社長の話では手当なら後年調整も出来るが、基本給としてしまうとそれが難しいからだという。
 良い勉強をしたと思って、これを機会に全体の給与を見直してみることを勧めた。
Q 給与を決めるなどということは簡単なことだと思っていたが、細かく検討してみるとなかなか難しい。基本給ってそもそもいったい何?
A 給与の種類に法の規制はないので、基本給というのも一般的呼称であるが、賃金の中の基本的部分といった理解のし方でよいだろう。
 ともあれ賃金の中では、付加的部分である各種手当以外の中核をなす部分であるから、量的にも全体の80%以上を占めるのが望ましいとされている。
 賃金政策としてこれを低く押さえる傾向もあるが、基本給は会社の給与に対する姿勢を反映するものとして理解されるから、手当を増やして全体としてはそれなりの金額になっているとしても、それでは社員には良い印象を与えないものだ。
 一般的な基本給の構成は下記のとおり。 基本給 → 本人給 → 年齢給
→ 勤続給
→ 職能給(能力給)
                    
 このうち本人給部分を厚くすれば生活給的、序列給的色彩が強くなり、職能給部分に重点を移せば能力給的色彩が濃くなる。
 厚生労働省の調査によっても、わが国では賃金のうち年齢や勤続に対するウエイトは意外に低く、職能給つまり能力給的色彩が圧倒的に高いことがわかっている。このことからも、ことさら現今の賃金体系を非難し、能力給制を云々する必要のないことがわかる。本人給部分と職能給部分を必要に応じて操作すれば済むことなのである。
Q 自分が勤めていたところでは基準内賃金・基準外賃金に明確な基準があったので、それが世間一般の定めだと思っていたのだが、そうではないのだろうか?
A この区分けに定まった定義はないことを先ず述べておこう。「基準内賃金とは」などと定説のように言う専門家もいるが、それもその人の説であるにすぎない。
 したがってどのように区分けしようとも、会社等の勝手ということになるのだが、一般的な考え方を二例ほど紹介しておく。
 その一つは基本給や能力給などの固定的なもの、あるいは毎月決まって支給される賃金を基準内賃金とし、時間外手当などの変動的な賃金を基準外賃金とする考え方である。この場合には家族手当や住宅手当は基準内となる。
 もう一つは、時間外手当等を計算する場合などに算入しなければならないと、法で定められている賃金を基準内とし、それ以外を基準外とする考え方である。この考え方からすると家族手当や住宅手当は基準外となる。
 どちらも一長一短ありではあるが、時間外手当計算時の便利さを考えれば、後者の区分けの方が実用性があるかもしれない。
Q うちは日給月給制を取っている。月給制にするとどんなに休んでも全額支払わなければならないからだ。でもそれじゃ良い人材がこないと後継ぎ息子が言う。そんなものだろうか。
A そのとおりだろう。だがどんなに休んでも全額支払わなければならないということはない。
 この質問のような相談が後を絶たない。そこで少し詳しく述べてみよう。
 通常の月給制においては、法定以外の欠勤や遅刻・早退などの非労働日数や時間数分は、ノーワークノーペイの原則によりカットされてよいことを先ず述べておく。
 この方式を日給月給制を混同しているケースが多いのだが、本来の日給月給制とは日ごとに支払われるべき賃金を、当人の希望や事務処理上の便宜のために月単位でまとめて支払うことを指す。つまり積み上げ方式である。
 これに対して通常の月給制とは控除方式であって、あらかじめ定められた月の給与から、法定有給休暇その他の非控除分以外の、欠勤や遅刻早退についてはカットして支給される。だが月給制であるから月の基本的給与は定められるため、例えば2月などのように、あるいは祭日の多い5月のように、稼働日数が少なくてもそのためにカットされることはない。そこに日給月給制とは違う価値がある。
 なお、いくら休んでも給与カットのない制度も確かに存在し、それは完全月給制などと呼んだりしている。学者や専門家の中には、月給制と称するなら完全月給制であることが望ましいと説く人もいる。だがその結果、質問者のように月給制にせずに、日給月給制にしている会社が多いとしたらどうだろう。
 自分は日給月給制社員だという意識は正社員ではないとの意識につながる。それで帰属意識はもちろん高いやる気が期待できるだろうか。それは本人にとっても会社にとっても不幸なことであろう。月給制なら完全月給制をという意見は、労働者のためを考えて発言しているようで実は逆効果。本末転倒になっていることを知らなければならない。
Q 5年以上勤めたら月給制とし、それ未満は日給月給制としているのだが。
A 課長以上は月給制でそれ以下は日給月給制などという会社も多い。いずれの場合も、そのようにする理由は、月給制の正社員にすると欠勤しても給与控除は出来ないが、日給月給制ならそれが出来るからだという。
 結論から述べれば月給制の正社員でも日給月給制でも欠勤控除はOKである。そのためにこそ有給休暇に関する法律規定がある。月給制の正社員は欠勤控除は出来ないのであれば彼らに同法は不要となる。
 確かに「月給制正社員の欠勤控除は望ましくない」という理論があることはある。その理論を適用したいというなら自由だが、そのことによって相談ケースのような会社が生まれるという大きな問題が残る。すなわち、月給制正社員にしてしまうと欠勤控除が出来ないから、いつまでも日給月給社員のままで留めておくという問題である。
 そのために“自分は何年も日給月給制という不安定身分のままでいなければならない”と感じる社員が数多く生まれるという重大問題である。実際には月給制正社員でも日給月給制でも法的扱いは同じなのだが、それを知らなければ不安感は持続する。そればかりではない。自分は月給制の正社員ではないという意識はプライドにも影響するし、社内でのイメージも違う。
 家庭での家族の大黒柱としての威厳も自ずと異なってこよう。
 そんな状態の社員が熱意を持って仕事に取り組むだろうか。プライドをもって会社のために働く気になるだろうか。
 長いアドバイザー経験から見ても、そちらの方がよほど重大な問題であることを指摘しておきたい。
 最初から全員月給制正社員とし、その代わり有給休暇消化後の欠勤控除は平等に行う。社員を大切にし、真に会社の発展を願うなら、こうあらねばなるまい。
 人間に関する法の解釈は、人間の存在を忘れてはならないのである。

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【直接払い】
Q 給与支給日に、風邪で休んでいて取りに来れない者が、代理に友達を行かすから渡してほしいという。ところが、たまたま来ていた税理士さんが、それはまずいと言うのだが?
A 税理士さんの言うとおり、それはいけない。法によると賃金を代理人に支払う事は禁止されている。生活の糧としての賃金を債権者などに不当に搾取されることを防ぐためである。
 ただし、使者に支払うことは差し支えないとされている。では代理人と使者はどう違うのだろう。
 使者は、例えば妻や子のように本人の支配下にある者をいうとされており、その関係にない者は代理人となる。と言うと、妻が夫の支配下にあるとは何ごとかと、どこかの偉い女史さんに叱られそうだが、一応そういうことになっている。

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【産前産後休暇と賃金】
Q 妊娠中の女性がいるのですが、間もなく産休に入ります。今までこのような取扱いをしたことがないものでよく分からないのですが、この間の賃金はどうすればよいのでしょう?本人も心配しているのですが…。
A 出産に伴う休業期間中の賃金について、法律上は有給とも無給とも特に規定は定められていない。なので、賃金を支給してあげても構わないし、無給としても問題はない。ただ実際には、賃金は支給しないとしている会社がほとんどのようだ。
 産休中の収入減が気になるところかとは思うが、もし賃金を無給とした場合であっても、代わりに健康保険から「出産手当金」を受けることができる。勿論女性本人が社会保険に加入していることが必要だが、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間)から産後8週間の、休業している期間は、賃金の約 60%が支給されることになるので、そのように従業員にも説明してあげると安心されることだろう。

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【賃金の男女間格差】
Q 運送業をしていますが、やはり女性だと荷下ろしに時間がかかってしまい得意先からもクレームが出ています。他の社員でカバーしなくてはならないので効率も悪いのです。今後女性を雇う時は男性に比べて賃金を低く提示しようと思うのですが。
A 男女の性差をもって賃金に差をつけることは出来ません。労働基準法違反となります。
 例えば一般的に行なわれている、総合職や一般職といった区分により仕事内容などを変え、それぞれに応じた賃金体系にすることは差し支えありませんが、これも男女差をなくした区分けでなければなりません。
 採用後も、男女の性差ではなく、人事考課に従って差をつけることは可能です。念を押しますが、客観的に見てきちんとした理由のある考課基準に従っての考課であり、その結果としての差でなければならないということです。

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【各種手当について】
Q これまで賃金については特に体系的なものもなく、行き当たりばったりで決めてきたので、ここらできちんとしなければと思っているのだが、さてどんな風にしたらよいのかがわからない。特に手当ての種類や決め方はどうしたらよいのだろう。
A 以前、大まかな賃金の構成と、基準内、基準外賃金の考え方などについて述べたので、ここでは質問に沿って手当を中心にして述べる。
 先ず考えなければならないのは、手当には法によって定められている法定手当と、会社の独自で定めてよい任意手当の区別があることである。
 法定手当はともかく、任意手当に法の規制はない。そのため多用される傾向があるが、やたら手当の多い会社はかえって敬遠されることを肝に命じたほうがよい。
イ、法定手当
・時間外手当(残業手当、超過勤務手当)
 通常は1日実働8時間又は1週40時間を超えて(変形労働時間制の場合はそれぞれにあらかじめ定められた時間を超えて)労働させた場合に支払うべき割増手当であり、割増率は25%以上となっている。なお、短時間勤務のパートなどが決められた時間を超えて残業をしても、通算で8時間を超えなければ25%割増分は不要である。
・休日出勤手当
 これも時間外手当である。「法定休日」という特別な時間外に義務付けられたものであって、割増率は35%以上である。これが既に時間外手当であるから、この日に8時間を超えても更に25%の時間外割増は不要。また、特別な時間外手当であるから法定外の休日出勤には適用されない。まれに、法定外休日出勤は25%の割増、としている会社があるが法律上の義務ではない。法定外休日については1週40時間を超えなければ割増義務は発生しない。
・深夜勤務手当
 夜の10時から翌朝5時までの間の労働に対して義務付けられた手当であり、割増率は25%以上である。これは時間外手当ではなく夜間勤務に対する手当であることに注意。したがってこの時間帯の労働なら実労働時間の長短にかかわらず付与する義務がある。また、これは時間外手当ではないから、実労働時間が8時間を超えたら別途時間外手当を加算しなければならない。
ロ、任意手当
・役職手当(役付手当、管理職手当)
 部長、課長、係長といった役職に対して支払われる手当。支給根拠としては役職に対する付加価値説、責任手当説などがある。なお、この手当を支給することと時間外手当除外とは無関係なので注意。時間外手当除外者にするには労基法上の根拠が必要であって役職手当を付ければ済む問題ではない。このことはこれまでにも何度も説いてきた。
・家族手当
 生活扶助としての色彩が強く日本独特なものの一つである。普及率も高く、大企業では90%以上、中規模企業でも80%を超えているという。実際に家族扶養の目的での支給であれば割増賃金計算対象から外してよいが、例えば全社員に一律支給などとなると家族手当とはみなされず、割増計算対象にもなるし税法上の特典もなくなるのて注意。
・精皆勤手当
 出勤率奨励を企図した手当である。欠勤ゼロを皆勤とし、1日や2日程度なら精勤として、金額に差をつけて支給する制度にしているのが一般である。この制度は中小企業では相変わらず多いが、大企業ではかなり少なくなっているようだ。なお、法定の年次有給休暇を欠勤扱いにしてこの手当に影響させてはならない。法定の年休はそもそも出勤と同様扱いであると定められているからである。
・特殊勤務手当、特殊作業手当
 守衛や運転担当、あるいは看護師などの特殊勤務に就く者であって、その業務が他の業務よりも過重である場合などに支給されるものを「特殊勤務手当」などと呼び、高熱作業や危険作業、有害作業など、本人の健康に影響ある作業などに就く者に対する手当を「特殊作業手当」なとと呼んでいる。これも日本独特であって、欧米などではそもそも就業職務に応じて賃金が決められる仕組みになっているのがほとんどだから、このような手当の必要性はないよう
だ。
・資格手当
 管理系、技術系の公的資格から、その会社独自の試験により付与した資格などに対する手当として普及している。それらの資格を取得することを奨励する目的をも含ませて支給する場合が多いようだ。公的資格はともかく、会社独自にいろいろな資格を作ってやる気を喚起し、切磋琢磨させるというのもよいのではないか。
・地域手当
 以前は、地方による物価水準の違いを是正し、実質賃金の公平化を図る目的が大きかったが、今日はその意義は薄れ、寒冷地や僻地への転勤に伴う特殊勤務地手当としてのものとなっている。
・別居手当、単身赴任手当
 支店や工場、営業所などに家族と別居して単身で赴任する者に対する手当であり、別居によって余分にかかる衣食住の生活補助目的で支給されるのが一般だ。週に1度の帰省旅費なども含まれている場合もある。
・食事手当
 昼食に対する手当と、残業時などの夜食に対する手当の場合がある。大企業などの社内食堂による現物給付は別として、昼食に対する手当の例は中小企業ではあまりないが、夜食に対するケースは多い。もっともその場合も金銭ではなく現物支給の福利厚生費として支出することが多いようだ。
・調整手当
 通常は賃金体系を改定する場合などに大幅に下がる者にとりあえず支給し、少しずつ額を減らして本来の賃金に戻す、その間の調整として支給するケースが一般である。また、社会変動により初任給をアップするとき、賃金体系はそのままとして臨時にこの手当をつけ、合計でアップとなるようにするときなどにもこの方法をよく使う。だが、少し頭の良い者にはその意図が知られてしまい、次年以降がどうなるかを読まれて会社に対する信頼感を失い、かえって敬遠されてしまうといったマイナスをも持つ。便利に使える賃金なので多用される傾向もあるが、後で逆に厄介な結果になることが多いので極力使わないほうがよい。

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【能力給制度】
Q 給与本体でも手当としてもよいのだが、成果に応じた給与方式にはどんなものがあるだろう。
A 
1、大ブームの旋風が吹き荒れた職能給制や能力給制、そしてブームになるのかならないのか中途半端な年俸制などがその代表格だろうが、職能給・能力給制度は人事考課その他の複雑性ゆえに早くも行き詰まっており、特に小規模企業にその傾向が著しい。

2、年俸制はすでに何度か取り上げたように、日本では労働者の生計保護の立場から純粋年俸制は認められておらず、『年俸制の考え方を導入した月給制』にならざるを得ないという大きな制限があることと、そこから派生した細かな網掛け規制があるために、実際には一般労働者への適用には無理があり、上級レベルの役付者のみに留まっているのが現状である。
 しかもそれすら、労使双方ともにデジタル的シビアさに慣れておらず、どこかにアナログ的曖昧さを混ぜ込んでしまう日本人特有の性向からして、あまりうまく機能していない。年俸制の問題は大企業でも中小企業でも同様である。

3、次に成果型賃金制がある。大きく言えば年俸制もこの成果型賃金制に入る。この賃金制と能力給制との違いがよく分からないという質問を時々受けるが、能力給制は結果だけではなく、その過程としての能力をも重視するから必然的に能力アップを図ろうとする運動につながり、指導育成に重点が置かれてくる。人事考課もその考えを取り入れて、相対評価ではなく絶対評価が重要視されている。
 それに対して成果型の場合は、より直接的に結果としての成果を重視するから、その過程としての能力アップ指導育成努力などにはあまり重きを置かれない。そんなことは自分でやれ、ともかく成果を持ってこい、というわけだ。文字通りの実力主義であり、実力者もその実力に陰りが見えてくれば下に蹴落とされる。かつての栄光は通用しない。大関まで昇った者でも実力が低下すれば幕下に転落である。
 このようなことから、一時的カンフル剤としての効果は肯定するとしても、長期的やる気の持続となるとむしろ否定的である。スポーツの世界がそうであるように、ほぼ、例外なく短期で息切れするから、あの世界同様、人材も使い捨てとなってくる。それでよい業界ならそれでよいだろうが…。

4、次には業績給や歩合給、出来高給などのように、本給ではなく手当で操作する方法がある。いずれもその業績なり成績なりを数字で表すことが比較的容易な業務に対しての刺激給である。
 営業などの業務では歩合給が広く採用されており、生産現場での単純作業では出来高給制がとられている例が多い。また数量化にはいささか難がある業務では、業績給などの曖昧表現で支給しているようだ。
 なおこれらはいずれも、基本給などの固定的賃金のプラスα(アルファ)とすべきであって、これらをもって賃金の総てとしてはいけない。もしそうなると労働法で言う労働者ではなくなり、一人一人が個人事業主とみなされる恐れがある。

5、次に奨励給方式をあげておこう。これも曖昧手当であって、例えば業績が一定ラインを超えた場合とか、事務部門などのように業績が計れない部署の奨励策として支給されるケースが多い。また、結果給としてではなく、これから頑張ってほしいといった期待給として支給されるケースもあるようだ。

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